透析低血圧を起こしていると、透析中の患者さんを、悪心、嘔吐、あるいは下肢つれなどで苦しめます。だから、「透析は苦しい」と言われてしまいます。透析低血圧を絶対に起こさない透析方法があります。
それは緩徐血液透析(slow HD)という方法です。心不全などのため非常に重症になられた透析患者さんに、主として集中治療室で実施されます。連日10時間行い、1分間当たりの血流80ml、除水速度300ml/時を上限としています。私は、市大病院でこの方法を学び、目から鱗が落ちる思いでした。
「緩徐血液透析から通常の血液透析までの間に存在する幾段階もの透析条件のうち、患者さんお一人お一人の循環動態に見合った条件を設定すれば透析低血圧は防止できる」、このことに気づかされたのです。以後この気づきを、著作や講演を通じて公けにしつつ、実践を続けております。
透析低血圧の出現頻度は、一般的には20%とされています。ちなみに、「透析低血圧の出現頻度が、とびきり低い」という報告を探したところ、フランスのタサン透析センターで7.0%(1998年)、前田病院3.7%(2005年)、そして三田尻病院0.2%(2008年)でした。2011年の日本透析医学会学術集会では、世界一低い透析低血圧出現頻度、年間0.03%を花クリニックから報告させていただきました。 |